ポケットバーブック
本棚の隅に、『ポケットバーブック』という薄くてコンパクトな本がある。
辞書やら地図やらの隣に並んでいて、今でも月に1回くらいはパラパラと手に取って眺める。
執筆者はウイスキーライターのマイケル・ジャクソン(あの有名なミュージシャンと同姓同名)。たしか昨年の夏に亡くなって、新聞に小さな訃報が出ていた。
奥付けに、昭和56年初版とある。社会人になって3年目。新宿の紀伊国屋書店で買った記憶がある。178ページで1,200円だから、当時としては高い本だ。
“世界の酒/カクテル・ガイド”という副題がついている。酒の本は何冊か持っているが、これは無味乾燥な解説書にあらず。生き生きした筆致はユーモアと皮肉にあふれ、文才がほとばしる。読み物としても充分楽しめる。
あちこちに、鉛筆でつけたチェックやマーカーの跡が残っている。まさか全部飲んでやろうと思ったわけでもあるまいが・・・
しおり代わりに愛読者カードがはさんである。「牛込局承認 差出有効期間昭和57年12月」。あて先は倒産してしまった「鎌倉書房 第二書籍編集部」。
遠の昔に絶版になっていて、ネットでは2万円弱で取引されている。もちろん売る気もないが、今となってはお宝らしい。
破れかけた帯に、開高健のこんな書評がある。
キックがある。ない。
コクがある。ない。
ノドごしがいい。わるい。
飲める。飲めない。
酔える。酔えない。
そんな議論だけで酒を飲むのはさびしいことである。
この本を一読してから飲んでごらん。
突然、なにかが一変するよ。
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