国家の品位
金本の話の続き。
後頭部への死球で危険球退場になった木佐貫が、翌日の試合前に謝罪に訪れたらしい。金本はスポーツマンらしく「気にするな。また思い切って投げてこい」と声をかけたと、マスコミは美談として報じている。
車でラジオを聞いていたら、あるアナウンサーがこれはおかしいという。彼の意見は、相手チームの選手に対してはグラウンド外でも闘志をむき出しにして接すべし、ということらしい。
でもそれは違う。ラグビーにノーサイドという言葉があるように、試合や競技が終われば、スポーツに敵味方はない。ましてや人の命や身体とかいう問題になると、勝ち負けなど超越した次元の話。木佐貫が謝りに行くのは当たり前のことだ。
終戦直前に、アメリカのフランクリン・ルーズベルト大統領が急逝した。そのとき、日本の鈴木貫太郎首相は「深い哀悼の意をアメリカ国民に送る」というコメントを発表している。
スポーツどころではなく、生死をかけた戦争をしているのだ。その敵国トップの訃報に接して哀悼の言葉。おそらく非見識だと批判もされただろうが、鈴木首相は意に介さない。ちなみにこのときヒトラーは、死者に対して容赦ない誹謗の言葉を浴びせている。
このコメントに、世界中の識者たちが驚いた。国家の非常事態下でも、あの東洋の国には、生命に対する畏敬や礼儀がまだ存在する。それはそのまま国家の品位と受け取られ、日本には騎士道精神が残っていると賞賛された。
外務省の命令に反して、6千人ものユダヤ人に『命のビザ』を発給し続けた杉原千畝にしても然り。戦争や外交とスポーツは同列に論じられないが、どんな状況下でも勝ち負けに優先する倫理や礼節がある。ボクはこの態度、日本人らしくて誇らしく思う。
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